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人類滅亡の暗示?ネズミ実験「Universe25」に見る理想郷の崩壊

マウスによる「ユニバース25」というおもしろい実験を紹介します。理想的な環境を与えられたとき、一体どれほどの人が、その環境をフル活用できるのでしょうか。ネズミ実験から見えてきた人類の行く末とは。生き方を考える際のヒントとしてお楽しみください。

1.ネズミ実験「Universe25」とは

「ユニバース25」は、1960年代にアメリカの動物行動学者ジョン・B・カルホーンによって行われた動物実験です。

この実験の目的は、何の不自由もなく、のびのびと暮らせる環境におかれたマウスが、どのように社会を形成していくのか観察することにありました。

実験方法

ネズミ実験、ユニバース25の具体的な実験方法は以下のとおりです。

【その1】3000匹以上収容可能なネズミの居住スペースを用意する


幅2.7m四方、高さ1.4mの正方形の部屋に256の巣箱を設置し、ネズミはそれぞれの空間を自由に行き来することが可能。


【その2】4組の雌雄のネズミを放つ


【その3】水・食糧を十分に用意し、必要に応じて病気の予防もする


【その4】観察開始

 

この実験では、天敵が存在せず、水も食料も豊富で、さらに病気の予防までサポートされているという、まさに楽園のような環境が用意されました。

「Universe25」は、8匹のネズミから始まったのです。

巣箱にはそれぞれ15匹ずつ住むことが出来るため、ゆくゆくは合計3840匹にものぼる数のネズミがこの理想郷で暮らせる計算でした。

けれども、この「ユニバース25」というネズミ実験は、思いがけない衝撃的な結末を迎えることになるのです。

2.理想郷で起こったこと

ネズミ実験「Universe(ユニバース)」には、ユニバース1からユニバース24まであり、つまり今回が25回目の試みでした。

これまでの実験でネズミの数が思うように増えなかったため、カルホーンは、より複雑で立体的な巣を考案し、過去最大の規模で実施したのです。

ネズミ実験「Universe25」が開始されてから104日目に最初の出産が行われ、315日目には、個体数が620匹にまで増殖しました。

ネズミたちに異変が起こり始めたのは、それからまもなくです。

突如、起こり始めた異変

620匹に至るまでは順調そのものだったネズミ実験のユートピアですが、ある日、突如として、一か所に密集する現象が起こります。

本来であれば15匹しか入れないはずの巣箱に、何と111匹もぎゅうぎゅう詰めになって暮らし始めたのです。

居住スペースも餌場も、数や広さが充分にあるのにも関わらず、ネズミたちは決まった巣箱・決まった餌場に集まり、奪い合うようになりました。

 

ネズミは、自分のテリトリーを持ち、他の個体と適切なコミュニケーションをとりながら規律的に生存するのが一般的です。

 

しかし「ユニバース25」においては、そうしたネズミばかりではありませんでした。

自分のテリトリーを持たず繁殖行為もしない、無気力なネズミが出てきたのです。

その数は全体の三分の二にのぼりました。

現れ始めた攻撃性と、辿り着いた虚無

無気力ネズミは巣箱も餌場も決めずに行動するため、テリトリーを重視する規律ネズミから攻撃されるようになりました。

集団行動をする規律ネズミのオスは、それまでともに過ごしていたメスまでも攻撃し始めるようになります。

その結果、メスもまた自分の身を守るために攻撃的な性格にならざるをえなくなりました。

育児放棄のなかで成熟したネズミたちは、規律を知りません。

テリトリーを持たず交配を行わず、互いに奪い合っては、食べて寝るだけの生活になったのです。

560日後、出産の停止

無気力ネズミのみが暮らす世界はとても静かでした。

一時期には2200匹にまで増えたネズミたちは急激に減り始めます。

そして、実験開始から920日後、最後のオスが死にました。

「Universe25」のネズミは全滅したのです。

3.ネズミ実験は人類の滅亡を示唆している?

「Universe25」で起こったような現象が人間にもあてはまるとしたら、どうでしょうか。

  • 居住スペースは充分にあるのに、一か所に固まって奪い合う
  • 強者は支配的にふるまい、弱者は暴力性を増す
  • 他人のものばかり欲しがり、尊厳を失っていく
  • 集団行動からあぶれた者は無気力になっていく
  • 格差社会や差別行為

人間の世界でもこのようなことは日常的に起こっています。

選択の自由を持ちながら、絶対的安全性や優位性、唯一の正解を選ぼうとしがちです。

わざわざ競争率の高い目的地を目指し、怪我をして帰って来る行為を繰り返しています。

しかし、人間に反骨精神があるうちは、まだ希望はあると言えるでしょう。

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