地球は地磁気に守られている|磁気嵐や逆転によって起こりうる現象とは
地磁気は地下3000kmの外核「鉄の海」から生み出される
地球の地下3000kmにある外核には、超高温かつ流動体の鉄の海が存在していて、磁場はその旋回によって生み出されると言います。(最も外側が摂氏4.400度、最も内側の内核付近が摂氏6.100度)
ちなみに鉄の海と呼ばれるのは、地球の核が鉄やニッケルなどの金属を主とした物質で構成されていることからです。
欧州宇宙機関(ESA)が2013年に打ち上げた地磁気観測衛星「Swarm」(スォーム)により、この地球内部から発せられる磁場ならびに地磁気の動きを、正確に観測することが可能になりました。
実はESAは、Sound cloudで「地球磁場の怖ろしい音」を無料公開していて、現在も無料で聴くことが出来ます。
これは、ESAのプロジェクトに参画しているミュージシャンがSwarm(スォーム)から受信した地磁気信号データを元に、核内部の音波表現を再現して作成したものです。
デンマークのコペンハーゲン地中に埋められた30台以上のスピーカー音声を手掛かりに、過去10万年のあいだ磁場がどのように変化してきたか研究したと言います。
地磁気の変動で何が起こる?
地磁気は私達にとって、いわば守護者のような存在と言えるでしょう。宇宙が放射する高エネルギーの粒子や太陽風から、地球上の生命体が多大な影響を受けないようにバリアを張ってくれているのです。
地磁気そのものが生命に直接的な影響を及ぼすことはありません。しかし、スマートフォンの保護フィルターが破けると傷がつきやすい状態になるのと同様に、地磁気がなくなれば宇宙からの刺激をダイレクトに受けることになります。
怖ろしい想像ではありますが、地磁気が弱まり、高エネルギーの粒子が地球に降り注いで生命のDNAに衝突すると、ガンや奇形のリスクが急上昇すると予想されているのです。
地磁気の減少と磁気嵐・磁場逆転
実は地磁気は過去200年のあいだに約15%減少し、現在も減少傾向にあると言われています。地球上の磁場が大幅にずれる「地磁気逆転」現象が目前に迫っていることの現れではないかと予想されているのです。
地磁気の逆転が起こると、一時的にフィルター機能を失った地球は宇宙放射線や太陽風の影響を強く受け、送電網に壊滅的な被害を及ぼすとされています。
磁気嵐
近年、耳にする機会が増えてきた言葉のひとつ「磁気嵐」。地磁気の乱れが、広範囲かつ数日間続く状態を指す言葉です。
わかりやすい例として、連日にわたって色鮮やかでスピード感のあるオーロラが出現するなどの現象が起こったときには、磁気嵐が発生していると言えます。
大きな磁気嵐が起これば、地球の広範囲にわたって通信障害・停電・人工衛星への悪影響が出ることになり日常生活に大きなダメージを及ぼすでしょう。
その他、航空・交通機関の乱れ、動植物の生育・習性の異常なども懸念されます。地磁気の乱れは、太陽フレアの他、大規模な火山噴火や地震によっても生じる場合があるようです。
地磁気は意図的に操作できる?
結論から言えば、地磁気を一個人や組織、国家政府の意思で意図的にコントロールすることはほぼ不可能です。前述のとおり、地磁気によってある影響を引き起こすためには莫大なエネルギーと広大な範囲が必要になります。
仮に実現可能だとしても、地球環境にどのような影響を及ぼすか予測不能な重大行為であることは、想像に難くないでしょう。
地磁気をコントロールすることは不可能である一方で、実は地磁気を活用する技術が既に開発されています。
地磁気センサーの活用
2016年、NECは、GPS信号が届きにくい建物内にいる対象者の位置を地磁気を活用して正確に特定できる技術を開発したと発表しました。
AIを始めとした他の技術と複合使用することで性能を発揮するもので、地磁気センサーを用いて対象者の位置を誤差2mの範囲内で特定可能だとのことです。
その後、地磁気センサーはNTTなど各社で開発・改良を重ねられ、主に施設や店舗など屋内での対象者の位置測定・ルート案内・ガイド作成に活用されています。
生活を便利にしてくれる地磁気センサー。デメリットは、駅や倉庫など大型車両・鉄道車両が頻繁に移動するような環境下では地磁気が乱れるため正確に測定できない可能性がある点です。
まとめ
この記事では、地球を守る地磁気について探求しました。地磁気の乱れを起こすには莫大なエネルギーと範囲が必要であることから、国家政府・組織が意図的に磁場を操作している可能性はほぼゼロです。
しかし、磁気嵐によって引き起こされるかも知れない通信障害や交通網へのダメージ、人体に及ぼす影響は計り知れず、コントロール出来ないということに不安を覚えるのも事実と言えます。